源氏物語 若紫 十六
「少納言、直衣を着た方はどちら?宮様がおみえ?」なんてかわいい声なのだろう手を差し入れて探ると、柔らかな着物につややかな髪、かわいらしい姿が心に思い描かれて、ふと手をとれば、こわがって逃げようとするのについて、御簾の中に入ってしまった。「きらわないでください。あなたのことを、この世で一番思っているのは、この私なんですよ」外はあられが降り荒れていた
View Article源氏物語 若紫 十八
目覚めると、すでに昼である。若宮にあてて、手紙を書いた。「ふぅ・・何か違う」「恋文は何度も書いたことがあるけれど・・、幼い女王さんにはこんなことを書いても・・」「絵がいいかな・・そうだきれいな絵をいろいろ描いてあげよう、小さな女の子の喜ぶような」ちょうどそのころ、かの大納言邸には父君が訪ねてきていた。以前にもまして、邸内が荒れているのをごらんになった。古びた広い邸に、たったこれだけの人数で暮らしてい...
View Article源氏物語 若紫 十九
源氏の君は、今夜は左大臣家に来ている。いつものことで、あの人はすぐに出てきてはくれない。「あああ・・」ため息交じり、手なぐさみに東琴をひきながら「常陸には他をこそ作れ・・」と歌う声はつやめいて。そこへ使いに出していた惟光が帰ってきた。かくかく、しかじかとお伝えする。源氏の心は決まった。「明朝、夜の明けぬうちに行く。車はそのままにして、隋人一人二人、召しつけておけ」夫人には、「内裏にてしなければならな...
View Article源氏物語 若紫 二十
二条の院は近いから、まだ明るくなる前に行き着いて、西の対に車を寄せた。軽々と、若君を抱いておろした。「何か夢の中のことのようで、いったいどうすれば・・」と少納言はすぐには車から降りてこなかった。「若宮は、お連れしました。あなたは、お帰りになるのなら、お送りしますよ」そう言われて、少納言は笑って降りてきたが、胸がどきどきしてきて、父宮が、お迎えにこられて何と思われになるか、それもこれも、母様や、おばあ...
View Article源氏物語 若紫 二十一
こうして間近に見ると、ほんとうにかわいい顔をしている。いろいろな話をしたり、きれいな絵や、遊びの道具を取りに行かせて、幼い姫君の喜びそうなことを、あれやこれやとしてあげた。姫君は糊けの取れて柔らかになった濃い鈍色の喪服を着て、微笑んでいる。その愛らしいすがたに、思わずこちらも笑が浮かぶ。源氏の君が、東の対へ行かれたので、姫君は入り口近くに立って、庭の木立や、池の方などを覗いてごらんになった。霜枯れの...
View Article源氏物語 若紫 二十二(最終回)
残された人々は、宮様に申し上げようがなかった。けして誰にも、このことを告げてはならぬと、硬く口止めされていたから、「少納言が連れ去ってしまい、行方がわからないのです」というばかりであった。宮の落胆は、いかばかりであったことか。僧都のもとをたずねてみても姫君の行方はしれなかった。一方、二条の院では・・きれいな様子をした子供たちと、仲良くあそび、源氏の君を新たな父と慕う姫君の姿があった。 手に摘みて...
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